イベントを開催しました
2024年4月14日、 「一緒に世界を旅しませんか?」at 城町文庫 vol.28 を開催しました。皆さま、楽しい時間をありがとうございました。参加費の一部を認定NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金の「ウクライナ支援」に寄付いたしましたので、ご報告いたします。
英雄アキレウスのお話
英雄アキレウスといえば、「アキレス腱」や「トロイの木馬」などをなどを連想される方も多いと思います。
アキレウスは、紀元前8世紀の長編叙事詩「イリアス」に登場する英雄。今回は「イリアス」で描かれるトロイア戦争でのアキレウスの怒りのストーリーを中心に、その他、アキレウスがトロイア戦争に参戦する以前の面白エピソードや、なぜトロイア戦争が起こったのか?その理由について、また、トロイア戦争を背景で操るオリュンポスの神々のストーリーや、さらには「アキレス腱」や「トロイの木馬」の語源などなど、盛り沢山の内容でお届けしました。
今回お届けした内容から、その一部をご紹介しましょう。
アキレウス参戦前のお話1
クイズです。
アキレウスの母であり、海の女神であるテティスは、息子アキレウスが赤ちゃんのころ、アキレウスを不死にしようとして、あることをしました。それはいったい何でしょう?
1.神頼み
2.空に投げた
3.土に埋めた
4.水に浸した
正解は、
4の「水に浸した」でした。
冥界を流れる大河ステュク、日本でいうところの「三途の川」に浸すと、不死の身体になるといわれており、母テティスは、下の絵画のように、息子アキレウスを浸しました。
このシーンをモチーフにした作品は、数多くあります。
三途の川にディップしたテティス。
のちに、このディップの方法が、アキレウスの人生を大きく変えることに……。
アキレウス参戦前のお話2
ステュクスで息子アキレウスをディップしたとはいえ、「アキレウスの人生は、戦わなければ地味な長い人生、戦えば英雄としての死」という神託を受ける母テティス。どうにかして戦に行かせまいと、母テティスは、ある方法を取ります。それはいったい何でしょう?
1.引きこもりに仕立てた
2.女装させた
3.おバカにした
4.女神ヘラに託した
正解は、
2の「女装させた」でした。
女装させて女子たちに紛れさせれば、戦の迎えの者に見つからないだろうと、アキレウスは王宮で女装しながら過ごすこととなります。しかし、頭脳派オデュッセウスによって、見つけられてしまいます。どのようにして、オデュッセウスはアキレウスを見つけたのか?
オデュッセウスは商人になりすまし、女子たちが好きそうなジュエリーを携え、王宮に行きます。ジュエリーを広げる際、その中に、武具をそっと置きました。
ジュエリーを前に、わーきゃーはしゃぐ女子たち。その中に、ジュエリーには目もくれず、武具を手にしてウハウハする女子一人……。
そう、それが、アキレウス!
こんなお話が紀元前8世紀に語られていたなんて、ワクワクしませんか?
もう一つ、面白ストーリーをご紹介しましょう。
トロイア戦争の引き金のお話
時は遡り、アキレウスの両親である英雄ペレウスと女神テティスの結婚式。
オリュンポスの神々が参列するなか、唯一招待されなかった争いの女神エリス。「なぜ私を呼ばない!」と怒った腹いせに、「世界一美しい女性へ」と書かれた黄金のリンゴを投げ入れます。それを見つけたヘラ・アテナ・アプロディテの3女神は「これは私のものよ」と主張し始めます。気の強い3女神は、最高神ゼウスに「これは誰のもの? 誰が世界一美しいの? ゼウス、選んで頂戴」と言い寄ります(恐ろしい…)。ゼウスは誰を選んでも穏やかではなくなると感じ、羊飼いパリス少年に審判を委ねます。
震えおののくパリス少年に対し、3女神のプレゼン合戦が始まります。買収合戦です。
最高神ゼウスの妻で結婚の女神ヘラは「私を選んだら、世界一の富と権力を与える」といい、戦の女神アテナは「どんな戦も勝利を与える」、愛と美の女神アプロディテは「世界一の美女を与える」といいます。皆さんなら、誰を選びますか?
羊飼いパリス少年が選んだのは「世界一の美女を与える」といったアプロディテ。選ばれてご満悦のアプロディテとは対照的に、ヘラとアテナはもちろん大激怒!こわーい!
そして、羊飼いパリス少年(実はトロイアの王子)は、世界一の美女のヘレネを手に入れます。実はヘレネ、スパルタの王妃で既に既婚者でした。この人妻ヘレネを奪ったことで、トロイア戦争が始まるのです。
あー、ギリシャ神話は本当に面白い!
参加された皆さんにも楽しんでいただけて、とても嬉しかったです。
旅で出合ったトロイア戦争
私が旅の途中で出合ったトロイア戦争にまつわるものといえば、こちらでしょう。アテネの国立考古学博物館で出合った「アガメムノンの黄金のマスク」! アガメムノンは、世界一の美女ヘレネを奪われた夫メネラオスの兄で、ミュケナイの王です。トロイア戦争において、ヘレネを奪い返そうとギリシャ勢を率いた総大将。横暴な性格で、人望のない人物として描かれています。
しかし、調べてみると、こちらのマスク、アガメムノンの時代とは異なる代物のよう。トロイ遺跡を発見したシュリーマンが「これはアガメムノンの黄金のマスクだ!」といったことから、そう呼ばれるようになったそうですが、時代が合わないことが、のちに判明。その信憑性が疑われつつも、今でも「アガメムノンの黄金のマスク」と呼ばれているのだそうです。
ちなみに…
アキレウスのお話の中で、「のちに、このディップの方法が、アキレウスの人生を大きく変えることに……」と書きましたが、どんなことが起こったかといいますと、
そう、母テティスはディップする際、アキレウスの足首(アキレス腱)を握っていたため、その部分だけ水に触れなかった…。つまり、その部分だけ不死になれなかったのです。
のちに、その部分が急所となり、矢を射られた際、それが致命傷となり、アキレウスは死んでしまいました。現代で使われる「アキレス腱」の語源は、このお話に由来しています。
まだまだギリシャ神話のお話は続きます。皆さん、楽しみにしていてくださいね。
~ ご報告 ~
皆さんからの参加費は、経費を除き、認定NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)の「ウクライナ支援」に寄付しているのですが、先日、JCF主催の「ウクライナの子どもたちの絵画展」が開催されていたので、見に行ってきました。今回のイベントでは、その絵画展の様子をあわせてご報告いたしました。
素敵な作品です。私が旅したウクライナの美しい景色と重なり、懐かしさを覚えました。
侵攻の様を描いた作品もありました。子どもたちに、こんな絵を描かせる状況に、心が痛みました。
「イリアス」でのアキレウスの言葉
ああ、争いなど神界からも人の世からもなくなればよいのに、それにまた怒りも。怒りというものは、分別ある人をも煽って猛り狂わせ、また咽喉にとろけ込む蜜よりも遥かに甘く、人の胸内に煙の如く湧き立ってくる。
ご参加をありがとうございました。
また皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。
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