仕事大好き仕事づけの私が、まさか世界放浪一人に出るなんて…
大阪での大学生活を終えた私は、地元長野県へ帰郷し、松本市にある企業へ就職しました。企画広報部門を担当し、長きにわたって仕事中心の生活を送っていました。
仲間にも恵まれ、やりがいのある仕事で充実した日々を過ごしている最中、突然「インド」という言葉が私に降りてきました。それは、職場の人たちとの飲み会の席で、酔いが回った私に起こった、嘘のような本当の出来事です。
気のせいだとやり過ごすにはあまりにも強烈なその言葉に(何故なら私はインドに強い興味を持っていたわけではないから)、まるで導かれるように、その地「インド」へと足は向かいました。
言葉で表現できない「もどかしさ」
初のインドは感動と衝撃の連続。しかし、何に感動し、何に衝撃を受けているのか、自分の言葉で表現できませんでした。そもそも、私は何に感動し、何に衝撃を受けているのだろうか?それすらも分かっていなかったかもしれません。
分からないながらも手放したくない。そんな思いからか、帰国後は寝ても覚めても「インド、インド、インド状態」でした。インドで撮ってきた写真を飽きることなく幾度となく眺め、パソコンを開いてインドのニュースを探す。図書館へ行ってインドの本を借りてきて、ヒンドゥー教の神様に心を奪われる。近所のインド料理屋さんへ通ってスパイスを覚え、インド映画を見まくってインドの俳優に夢中になる。大型連休を指折り数え、夏休み、シルバーウィーク、年末年始にはインドを訪れていました。
インドからの問い
インドは遠慮なしに、様々なものを私に見せつけてきます。神聖なものとそうでないもの、美しいものとそうでないもの、目を見開いていつまでも見つめていたくなるものと思わず目を覆いたくなるもの、等々。そして究極ともいえる「生と死」までも見せつけてきます。
私はそれらを、驚きを持って見ることを一旦やめてみることにしました。あまりにもエネルギーが消耗されるからです。フラットな状態を心掛け、ただ静かに眺めてみると、今までとは違う「見え方」で見えてきました。
それは、相反するそれらは「ここにいますけど、何か?」と言わんばかりに、全てを分かっているような、もしくは何も分かっていないような、そんな佇まいで、自分の運命を受け入れているかのように、ただそこに存在しているのではないか、というものでした。
相反するものを見せつけられていたのは、インドからの問いかけだったのではないかと思います。善い悪い、正しい正しくない、そういった二極化思考で考えるのは、なんとも窮屈で、時に危険ではないかと、インドは私に問うていたのではないかと思うのです。ただ、在りのままの形で受け入れることの大切さを、インドは私に示していたのだと思います。
大切なものが移行していく
インドを知れば知るほど、インドに深入りすればするほど、大切なものが移行していくのを感じ始めました。今まで最も大切にしていた仕事への思いが少しずつ変わっていく。新たに何かが開かれる喜びと、ずっと大切にしてきたものを失いつつある悲しみ。この二つの感情が入り混じった状態が暫く続きます。
一年ほど経って「もうこの場所には留まることはできない」と認めたとき、「せっかく生きているならば、本当にしたいことをする人生を送りたい」と切望していることに気づきました。
本当にしたいことは胸の奥底にある
いざ「本当にしたいこと」といっても、すぐに見つかるはずもありません。何故なら、仕事を熱心に行うことが私の使命だと感じていたからです。
ならば、何度か耳にしたことのある「死ぬまでにしたいことリスト」を作ってみようと取り組み始めました。自由に書き出していいことくらい分かっているはずなのに、どこかでブレーキがかかっている。なかなか進まないリスト作成に、少し苛立ちながらも、何日も何日も時間をかけて、"自分版"リストを完成させます。それからまた何日も何日も時間をかけてそれを眺め、一つの結論にたどり着きます。
それは「自分の足で世界を旅する」ことでした。それは忘れていた、忘れたつもりでいた私の一つの夢でした。
旅を終えた自分は今よりもっと幸せになっている
辞表を書き、海外旅行ほぼ初心者の私は、2015年1月、ひとり「完全オリジナルの世界旅」に出発しました。
賛成する人と反対する人の比率は半々でした。反対する人の多くは、社会的にある程度の地位を築いた人たちでした。この年でキャリアを捨てて大丈夫なのか、今さら夢なんて世の中そんなに甘くないぞ…。そんな言葉を向けられても、怖くはありませんでした。何故なら、私には「旅を終えた自分は今よりもっと幸せになっている」という予感(確信)があったからです。
「旅を終えた自分は今よりもっと幸せになっている」という予感(確信)は、徐々に「自分の幸せは自分でつくる」という決意に成長し、そして「自分の命は自分で守る」という責任も意識的に加わってきました。
人生をかけた大プロジェクトの始まりです。
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