旅とは何か?
旅に出る前、「旅とは何か?」と問いを受ければ、
私はおそらく「旅は得るもの」と答えていたと思います。
何かを得るために旅をする。
得ることこそが旅の醍醐味なんだと。
ですが、旅を終えた今言えることは、
「旅とは捨てるもの」
ということです。
旅で何を捨てたのか?
では実際、何を捨ててきたのかといいますと、まずは、
バッグの中の「要らないもの」です。
旅をしていると、身軽になりたくなりたくなります。
何故なら、身軽になると動きやすくなるから。
動きやすくなると、行動範囲が広がり、楽しみも増えていく。
この良い連鎖の中に身を置くと、
要らないものを「要らないもの」とちゃんと認識できるようになってきます。
「要らないもの」判別センサーがちゃんと働くようになってくる、とでもいいましょうか。
高価だったという理由だけで持ち続けている重たいブーツ、
繰り返しの手洗いでヨレヨレになってしまったお気に入りのTシャツ、
片方だけになってしまったピアス、等々。
確かに手に入れたときは大切だったかもしれない。
けれど、「今」に焦点を当てた場合、どうなんだろう?
次に捨ててきたものは、心の中にある「要らないもの」です。
人との関わり方や言葉に対する「コンプレックス」、
年齢や経験から持ってしまいがちな「プライド」、
『○○なんてあり得ない』というような「決めつけ」、
『私は○○みたいなことは苦手』というような「思い込み」、
『こうしたら(こうしなかったら)そうなるでしょ』というような「決めつけ」、
『日本人はこうで、□□□人はこう』というような「先入観」、
『私はせいぜいここまででしょ』というような「枠」、等々。
心の中の「要らないもの」も荷物と同じで、
捨てると身軽になり、
動きやすくなります。
そして、行動範囲が広がり、
楽しみも増えます。
この心の中の「要らないもの」の中には、
意図的に捨てたものもあれば、
必死で旅をしていたら、
いつの間にか消えていた、
というものもあります。
以下は、
世界を2周して翌日タイのチェンマイから帰国する、
というタイミングで書いたものです。
これがベースとなり、今の私がいます。
I'm going back to Japan tomorrow. I don't want to finish my world trip but also am excited because the next chapter of my life will start soon.
明日、日本へ帰ります。
荷物を軽くするため、要らないものは捨てて帰ろうと心に決めてジャンジャン捨て始めたところ、この痛み切った髪も要らないなぁと思い立ち、急遽予定変更で美容室へ。失敗続きの海外美容室だったけど、今日は大正解でした。
イタリアに居た頃の長さにしたくて手で示したら、20cmほどバッサリ切ってくれた。いつの間にそんなに伸びていたんだろう、長く旅をしていたんだなと実感した。
悩みの種だった髪を切ったことで、とたんに気分が軽くなり、暫くチェンマイの町をサイクリングした。風に揺れる自分の髪を楽しみながら、22ヶ月に及ぶ世界旅を振り返った。
旅を通じて、忘れられない貴重な思い出がいっぱいできた。
素敵な人に出会った。幸せにしているかしらと今でも気に掛かる人にも出会った。一生の友と呼べる人にも出会った。自国の情勢のせいで努力が実らないと悲しみながらも夢を語ってくれた人にも出会った。価値観の違いから旅仲間解消せざるを得なかった人にも出会った。その話をしたら僕も経験あると言って笑い話に変えてくれた人にも出会った。
魂が震える景色を数多く見た。名前も知らなかったのに懐かしさを覚える町にも出合った。今すぐ立ち去りたいと思う場所もあった。
いろんな経験や体験もした。日本で暮らしているだけなら想像すら出来なかったこともした。初めて抱いた感情も数多く味わった。自分もなかなかやるなぁと感心したときもあった。自分が何を大切に生きているのか改めて分かったときもあった。
いろんなことが出来るようにもなった。人に迷惑を掛けると臆病になるよりも、人と関わった方が楽しみが増えるということも改めて分かった。
どれも皆とっても貴重な思い出。でも、全部を抱えて帰るのは少し大変かもしれない。
髪を切り、思い出が詰まっているけど二度と着ることのない服やお気に入りの町で見つけたけど今は壊れて使えないピアスなどを捨てて思ったのは、大切な思い出は大切なままだけど、確実に時間は流れて形を変えているものもあるってこと。
旅の最後に断捨離とは少し意外だったけど、要るものと要らないものを整理してみたら、スッキリした。なんだかこれから、人生の新たな章が始まるんだなんて感じられて、帰国が楽しみになってきた。新しい幸せを入れる空きスペースが出来たってことなのかな。
でも、やっぱり私は一生旅人でありたい。
まだまだ行きたい場所、見たいところ、経験したいこと、体感したいこと、会いたい人がいるから。
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